昔おじいちゃんの家にみかんの皮を剥くことができる道具が置いてあった。
先端に刃がついていて、そこにみかんを通すと薄皮だけが綺麗に剥がれる。
放課後はいつもおじいちゃんの家に行って、猫と戯れたり、絵を描いたり、ヨーグルトやみかんを食べたりしていた。
その日もいつものように遊びに行ってみかんを食べていたと思う。
あのみかんの皮を剥く道具はムッキーちゃんという名前らしい。
まだ幼かった私は生まれて初めてそのムッキーちゃんで指を切った。
痛かったのか悲しかったのか、その瞬間私は泣いてしまった。
理由はわからないけれど、この出来事はふとした瞬間に思い出す記憶の一つである。
おじいちゃんは3年前に亡くなった。
もう4年ほど会っていなかった中での訃報。
久しぶりに会った姿は痩せこけていて、頭を撫でたら冷たかった。
姿形がなくなるところを見たくなくて火葬には行かなかった。
最後に生きて会ったのは2017年頃。
それも会うのは4年振り。
私の姿を見た瞬間おじいちゃんは泣いてしまった。
久しぶりに会えて嬉しかったのだろうか。
今はみかんを食べる機会がほとんどない。
自分で買うにしてもあの薄皮の部分が好きじゃない。
だけどムッキーちゃんがあれば気兼ねなく買えるかもと少し思った。